「ブラック企業をやっつけろ!」システム開発で業界のイメージを変える“ロック”なITベンチャー
written by ダシマス編集部
長時間労働や低賃金が原因となり離職率が高いとされる「ブラック企業」。
早期退職を見越し大量採用された社員は入社後、厳しいノルマやサービス残業、ハラスメントなどによって苦しめられることになります。
働き方や生き方の多様性が訴えられる今、その影は少しずつ薄くはなってきているものの、まだまだ日本には数多くのブラック企業が存在しているのは事実。
そんな中、大阪のITのベンチャー企業「株式会社ロックシステム」の経営理念は「ブラック企業をやっつけろ!」
今回は関西弁が飛び交う大阪のオフィスにおじゃまして、会社創業にかけた想いや今後についてお伺いしました。
岩元仁
株式会社ロックシステム 代表取締役 趣味:ボルダリング、フットサル
新田尚義
株式会社ロックシステム システム部長 趣味:だんじり、漫画
人材育成にも力を入れる「ロックシステム」!
ー本日はよろしくお願いします!ところで、岩元さんと新田さん、お二人の雰囲気がずいぶんと違うなと思ったのですが、お二人は現在どのような業務を担当されているのですか?
岩元:気づきました?いっしょに会社を立ち上げたメンバーなんですが、見ての通りキャラがまったく違うんです(笑)。
▲見た目もキャラクターも違う新田さん(左)と岩元さん(右)
岩元:僕は会社取締役として、経営戦略や社内研修の体制のチェックだったり採用の面談をしたり、新しい事業の計画をしたりしています。会社を立ち上げる前はフリーランスでシステムエンジニアをしていました。
新田:僕も元々はシステムエンジニアをメインにやっていましたが、今はプロジェクトリーダーとして、タスクの割り振りやメンバーの成果物のチェックをやっていますね。
ー事業としてはどんなことを専門にされているんですか?
新田:大手企業から中小企業まで様々な企業様と取り引きをしていて、そこで依頼された内容に合わせてシステムを開発しています。
具体的には、携帯電話のシステムや企業内の経理システム、ワークフローや承認のシステムなど、多岐多様な開発や運用をさせていただいています。
技術者の9割くらいはお客さん先に常駐していて、より近い距離で要望を聞いてシステム化を実現するということをしています。
岩元:お客さんとのやり取りを大事にして、より良いものを作れるように仕事をしています。プロジェクト単位で、バリバリプログラミングをしたりすることもあれば、要望を聞いて概要だけを作るというパターンもあります。
会社として今が6年目ですが全体で50人くらいのエンジニアがいて、常時30プロジェクトくらいには携わっています。自分たちでエンドユーザーさんをあたっての開発にも力を入れています。
ー未経験者の採用もされているということですが。
岩元:業界的に未経験者は採らない会社も多いですが、このままでは新しいエンジニアは育しません。ロックシステムでは2年前くらいから社内研修制度を整えてきたので、社内で教えて育てるという環境もあります。
お客さんとの信頼関係が基盤にあるので、常駐先でもわからないことは教えてくれる人がいたり、自分たちもマメに遠隔で困っていることがないか聞いたりするようにはしています。
そして社内研修で培ったノウハウを生かして「ロックシステムアカデミー」というプログラミングスクール事業もやっています。一般的なプログラミングだけを学ぶスクールではなくて、社員の横に座って肩を並べて仕事内容を見てもらいながら学んでいくというものです。
オンラインの教材で勉強をしてIT業界に来てくれる人はたくさんいますが、それだけでは仕事のやり方っていうのがなかなか身に付かないのかなと思っています。なので実際の仕事に接しながら学べる環境の事業も開始しました。IT業界は人材不足と言われていて経験者は基本どの会社でも喉から手が出るほど欲しいと思っていますがロックシステムでは未経験者もどこでも通用するエンジニアを育てることにも力を入れています。
一人前のエンジニアを育て、人材不足を解消していくことで、一人一人の負担を軽減していくことも、企業理念のブラック企業をやっつけろ!に繋がっていくと思っています。
経営理念は「ブラック企業をやっつけろ」
ー気になっていたのですが、「ブラック企業をやっつけろ!」という企業理念にはどんな想いが込められているんでしょう?
岩元:ズバリIT企業にはブラック企業と呼ばれてもおかしくない会社が多いからですね。
そもそも「エンジニアやプログラマーはめちゃくちゃ働いてなんぼ」という印象があると思うんですが、働く内容が重要です。
納期に間に合わなくなったり、バグを出してしまっているのであれば、ものづくりの職人としてある程度残業は仕方ないと思う側面もあります。
しかし残業ありきでスケジュールを考えたり、頑張っている感を出すために残業をするのは言語道断だと思います。そんなIT企業が数多くあるので経験の浅いエンジニアはそこで一人で悩んでしまい、労働時間も長くなり仕事が遅くなれば上司に怒られる、そんな負の連鎖が続いている人が多いからこそIT業界はブラックだと言われていると感じています。
その状況を変えるために自分たちでエンジニアを守れる会社を立ち上げました。
担当だからって出来ないことまで全部やろうとする必要はなくて、無理なことは無理だと誰かに頼んだり、スケジュールを伸ばしてもらったり、担当者を増やしてもらうといった調整方法があるはずです。
その考えがIT業界で一般化していけば、ブラック企業で働く人もいなくなるのではないか、という想いからきています。
ー残業を減らすことや効率よく仕事をするためにはどんなことが大事でしょうか?
岩元:根本的な目的を知ることですね。時間やできることに制限がある中で、「良いシステムを作る」ところに向かっているということ。その上で相手の立場に立って、要求を理解して、できないことはできないと言うことも大事ですね。なぜできないのかを明確にして、どうするかを提示できるようにする。社員にはそういった考え方ができるように研修やお客様先に出てからもサポートをしています。
ーITは業界的にブラック企業が多い、というイメージがあるのはなぜなのでしょうか?
新田:ひとりで常駐先に送り込まれて、何も言えずに辞めていく人がとても多かったのだと思います。
僕も昔働いていた会社は2ちゃんねるで叩かれるようなブラック企業でしたが、働く時間が長い分、もちろん学ぶこともすごく多かったです。
与えられた環境に左右されがちですが、本人のやり方次第で変えられる部分って実は十分あるんですよね。会社に改善を求めて案を出したり、もっと会社に言っていいんです!それを自分の中だけで我慢している人がけっこういるのが問題なのかなと思います。なので、マネージャーという立場の人やしっかりと相談できる人がいることが大事です。
うちの会社はメンター制度をやっていて、先輩社員が後輩社員の技術的な相談や心のケア、労働時間の管理などをして問題点や改善案を抽出し、労働環境の改善をしています。
岩元:納品前の忙しいときもありますが、全社員の平均の稼働時間は残業なしを達成していますし、離職者もほとんどいないので、会社としての体制も整ってきたのかなと思います。
今後そういった取り組みをさらに強化してき、それがIT業界で一般的になればブラック企業もなくなると思います。
ITの導入で地域をもっとおもしろく
ー岩元さんがロックシステムを立ち上げたきっかけはエンジニアの労働環境改善以外に何かありましたか?
岩元:4,5年フリーランスとしてエンジニアをやっていたのですが、同じことの繰り返しだなあ、と感じていたのもありますし、あとはフリーランスだと金融機関からお金を借りにくいというのもありました。で、新田と『ぴちょん』というあだ名の人間に声をかけて、その3人で立ち上げることになりました。
新田:起業は自分の性格に向いていないなと思っていたところ誘ってもらい、一緒にやろうと思いました。同じタイプの人間と仕事をしてもおもしろくないなと思っていて、岩元は自分と全く逆のタイプなんで、おもしろいかなあと思ったのが大きいですね。
岩元:タイプが違うように見えて実は仲良しなんですよ(笑)。休みの日はいっしょにフットサルに行ったりもしますよ。
ー運命の出合いだったわけですね(笑)。これから、会社として挑戦していきたいことはありますか?
新田:いろんな地方に支社がある会社さんと仕事をしていると、地方に合ったシステムってあまりないなと感じるので、そういった地域に対してシステムを導入することで課題解決ができるといいと思っています。
僕は、物を買うとき日本製のものだと安心する古いタイプの人間ですが、そういった感覚で、地方企業の方も固定概念で大手のIT会社に依頼をしているところが多いと感じます。
でも逆に小さい会社の方が融通も効きやすかったり、寄り添いながら地方のニーズに沿ったものを作れる部分もあると思います。地方が都心に合わすのではなくて、地方でもなんでも自由にできるのだという認識が生まれていくといいですね。
岩元:そもそも、プログラミングは業務の改善や目的を達成するためのシステムを構築する、企業や個人のちょっとした問題解決や効率化のツールを提供しています。そういった点からしても、地方にはすごく需要があるかなと思います。
地方の古い企業さんは勤怠や在庫管理も全てアナログでやっていたり、魅力的な商品も地元の人にしか知られていないといった問題も、システムを使えば効率化や売り上げを上げる手助けができると思います。弊社ではそういった問題解決に繋がるシステムをつくることができます。
最近ではドローンを農業に活用したりとか、クリーニング店でAIを取り入れたり、地方でもIT化は確実に進んでいます。
中国の火鍋のチェーン店では、配膳だけでなく厨房にも自動化設備を導入しています。でもロボットでは代替できない接客などの対人のサービス面にも力を入れて、もう一度来たいと思ってもらえる体験の提供にも力を入れています。便利にするだけではなく“おもしろくする”というのもひとつのキーワードだと思いますね。
新田:以前全国を対象にしたブラック企業に関するアンケートを行ったんですが、地方にも自分の会社はブラック企業だと感じる人は割合的には都心部とそんなに変わらないということが分かりました。
もちろん人間関係等もあると思いますが、業務効率化のシステム等が行き届かず長時間労働に苦しんでいる人もいるかもしれない、そういう問題も私たちの作ったシステムで解決することができます。ご相談があればどこでも行きますよ!
個人の夢が実現できる会社に
ー今後、どんな会社にしていきたいですか?
新田:みんなが好きなことをできる環境にしていけたらと思います。ゲームを作りたいという人もいますし、それに対して自分自身に知識がなくても、仕事を進めていく知識はあるので、そこを上手く使ってやりたいことを応援していけたらいいですね。
みんなが楽しそうにしているのを見るのが僕にとっても一番嬉しいです。もちろん売上に結び付けるのが大事ですが、仕事をしている時間が楽しいものになれば人生も楽しくなると思うんです。なんとなく仕事をしている時間って一番しんどいですから。
岩元:会社を立ち上げた頃、5,6年で力を蓄えて新しいものにチャレンジしていきたい、と立ち上げメンバー3人で話していたんです。
今ちょうどその時期に来ているので、オフィスの拠点や人を増やして、ワーケーション化をするなど新しいこともしていきたいですね。
あとは、システム開発の他にも事業展開を考えていて、そのひとつとして地域を盛り上げるような何かをできたらいいなと思います。
自分が興味の向いたことをやるのも大事ですし、社員ひとりひとりがやりたいことを見つけたときに、それがその人の職業になるのが理想です。ITに関係していないことだとしても、それが事業化したときには課題の解決のために必ずシステムが出てくると思うんですよね。
なので、自由にこんなことをやってみたいとかそういう想いがある人は大歓迎です。そういった意見がどんどん出てくるようにロックシステムでは「イノベ会議」っていうのをやっています。
ー「イノベ会議」とはなんですか?
岩元:企画することの練習をするミーティングですね。興味がある人に参加してもらっていて、だた思いついたことを企画にするのではなくて、アイデアを膨らましたり、ということを泥臭くやっていて、そこで出た企画から事業化をしていけたらいいなと思っています。
プログラミングをしたい人はそっちを頑張ってもいいし、ロックシステムには本当に色んな人がいて、まさにダイバーシティです。
今はVTuberをやりたいと言って、実際に動画を制作している社員もいますし、最新技術を学んで技術力をつけたいという社員で技術研究チームを作って、研究内容をブログにしています。これがやりたい、と言われたら場所やパソコンを提供したりなど応援はするので、これからそういう人がもっと出てきたらいいなと思います。
▲毎年恒例の社員旅行、2020年は沖縄へ!
取材を終えて
見た目もキャラクターも異なる岩元さんと新田さんから、経営に対する共通の想いを聞くことができました。
業界のブラックさを痛感したからこそ、それを改善したいという想いは、システム開発を通して現状をより善いものにするという、エンジニアの使命に近いものがあるのかもしれません。
ブラック企業の撲滅と地方の課題解決に向けて全国に進出していくロックシステムの今後が楽しみです!