「ビジネスってゲームみたいで面白い」JFRカード二之部代表が今まさに格闘中のステージとは

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written by 斉藤彩

JFRカード株式会社代表取締役、二之部守様への特別インタビュー企画!
今回の取材では、JFRカード様が今後提供していきたいサービスや、二之部代表が理想とする会社像、たった今抱えているリアルなお悩みなど、現在のJFRカード様に関するトピックスを惜しみなくお話しいただきました。
二之部代表だからこその仕事への向き合い方は必見です!

 

ーインタビュイー:二之部 守(にのべ まもる)様

ーインタビュイー:二之部 守(にのべ まもる)様

1961年生まれ、三重県出身。
JFRカード株式会社代表取締役社長 兼 J.フロント リテイリング執行役。

東京大学文学部卒業後アメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社入社。
ニューヨーク大学経営大学院修了。
アメックス・カード・サービス株式会社代表取締役社長、リシュモン・ジャパン株式会社 カルティエ・リテール本部長、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社ビジネスデベロップメントIIヘッド、株式会社Origamiアドバイザーを経て2018年3月より現職。

 

「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」ビジョンを体現する取り組みの数々

ーーーJ.フロント リテイリングの「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」というビジョンに対して、二之部様自身はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

現在当グループのビジネスの中心は、大丸松坂屋百貨店・パルコの2つになります。ではなぜこの新しいグループビジョンを掲げたかと言うと、やはり今のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなってきているからなんです。

従来の百貨店でイメージされるような、「食品やラグジュアリーブランド、婦人服まで色々ありますよ」というところから脱していかないとビジネスの世界では生きていけません。

 

まさにモノからコトに変わっていくこの時代で、確実に存続し続けるためには今まで以上に大きく変わらなきゃいけない。ではどこを目指して変わっていくの?と考えたときに、「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」という方向へ行こうよと。

 

グループ内で私たちが担っているカードビジネスも同じで、クレジットカードを簡単に使えるようにするとか、ポイントが貯まりますというのはもう当たり前の機能、つまりコアの価値提供なんです。その上での付加価値って何?と考えたときに、ポイントプログラムで日々の暮らしを楽しくするお手伝いができるのではないかと思っています。

そういう意味で、グループ全体のビジョンとJFRカードの目指す姿、ミッションはうまく整合性が取れているなと感じています。

 

実際、JFRカードという会社は保険や金融商品、ローンなんかも扱っていますが、これらの金融商品はあくまでもツールなんですよね。このツールを使って成し遂げたいのは、つまるところ「お客様の幸せ」であったり「お客様が安心して暮らせること」なんです。

ですから「お客様の暮らしを豊かにして将来の心配を少しでも和らげられるカード会社、金融会社でありたい」という想いを込めて決められたこのビジョンには共感していますよ。

 

ーーー「あたらしい幸せを発明する」という観点から生まれた具体的な事例があれば教えていただきたいです!

正直ビジネス面だとまさにこれから作っていく部分なので、実例としてお話できることが少ないんですが、例えば縦型のクレジットカード。これは珍しいものなので、面白いなと思いましたね。

 

 

大丸300年、松坂屋400年という長い歴史があると、どうしても守りの文化があるんですが、古き良き部分を残していきながら新しいことをやっていきたいですね。

 

ーーー確かに組織として歴史があると、なかなか殻を破るのが難しかったりもしますよね。

そうなんです。その中でも変えていこうとしているところもあります。

例えば当社は東京オフィスを2019年6月に開設しました。「オフィス時間が豊かなら、人生も豊かになる」「オフィス空間のクオリティーが、人間の情感や思考を向上させる」。だからオフィスにはこだわりました。

そこにバーカウンターがあるんですが、東京オフィスを開設した当初は仕事が終わったらみんなでスポーツ観戦しながらお酒を呑もうとか、ホットプレートを買ってきてたこ焼きパーティーをしたいねという声があったりとか。実際に大阪の本社とWEBを繋いで一緒にゲームをしながら新年会も行いました。
どれも今は新型コロナの状況もありできませんが。

他には服装なんかもそうですね。僕は持株会社の経営会議にもスーツではなくジーンズで参加するんですよ。
だって”違う”って”有り”じゃない?ってね。

 

「何かを変えていきたい」というメッセージを発信するときに、見た目ってものすごく大事だと思っています。「なんか違うな」って気付いてもらえたら成功です。そういう意味ではオフィスも服装も同じですね。

「商品に関係ないじゃん」と言われてしまえばそれまでなんですが、特に伝統ある会社なので、現状を疑って変化していくとか、前例を打ち破りたいとか、「やろうよ」って言って実際にやっちゃう文化は大事にしたいと思っています。
 

▲オフィス内のバーカウンターを案内していただきました!

 

ーーービジネス面だと実例が少ない、ということでしたが、クレジットカードの「貯めて、使う」というポイントプログラムから次のステップに行くにあたって、現在思い浮かんでるアイデアや進んでいるお話があれば教えていただけないでしょうか?

すべてのポイントプログラムに対しての答えではありませんが、当社が目指しているのは、JFRカードだからこそ提供できる付加価値を付けること
「貯める」のもそうなんですが、特に「使う」方にフォーカスしていきたいと思っています。

 

例えば、世の中で一番付加価値として認知されているのはエアラインのマイルだと思うんですが、あれって空いている席を提供することができれば、飛行機会社側のコストはタダなんですよ。

ところがお客様にとっては、ポイントで飛行機に乗れちゃうというものすごいバリューになりますよね。それに加えて旅先で数日楽しむとなるとそれ以上の消費が生まれると。

これって価値に換算するとものすごく大きいと思いませんか?あるいは価値に換算できないこともあるんですよ。…というのを、ポイントの使い方として作っていきたいですね。

 

ーーー既に考えられているサービスはありますか?

百貨店のサービスの一環で「ファッションナビ プレミアム」というお客様のコーディネートをアドバイスするサービスがあるんですが、これが人気でなかなか予約が取れないんです。例えば、その予約を3000ポイントでできるようにしますよ、とかね。

それから、どんなにお金を払っても買えない限定品があったとして、1万ポイントで購入権をさし上げます、というのもかなり需要があるだろうなと。

百貨店だからこその価値を付けていかないと、他社さんのあまねく使えるポイントサービスには勝てないと思っています。

 

「社長、そうじゃないです!」が聞きたかったりする。これからのJFRカードに浸透させたいカルチャーとは

 

ーーー伝統のある会社、というお話が出てきましたが、二之部様の代表就任後、元々いらっしゃった方々からの反発のようなものはありませんでしたか?

3年半前にJFRカードに入社したんですが、最初はやはり不安でしたね。ずっと外資でやってきた私がいきなり社長を名乗ることで、足を引っ張られたり、反抗する社員もいるんじゃないかなと…。

でも足を引っ張ろうとか反発してやろうとか、そんな威勢のいい人はあんまりいませんでしたね。みんな従順というか。
ありがたいことでもあったんですが、もっと「社長!そうじゃないですよ!」みたいな、チャレンジしてくるような人がいても良かったなと。

 

ーーーこれから新しいことにチャレンジしていく中で、立場関係なく物申せる人が集まるようなカルチャーが理想的、ということでしょうか?

そうそう!僕そういう人ウェルカムです!
昔から知っている仲間でも、新しく来た若い社員でも「いや、それ違いますよ!」って言える人を大事にしたいな。

僕にだけじゃなく、仲間同士で「これ違うでしょ!」というやり取りが生まれるのっていいチームだと思うんです。
建設的な論争や、良いものはアウトプットするというカルチャーはぜひ作っていきたいですね。

 

ーーー活発に意見を出し合うカルチャーを作っていくにあたって、今いる社員や新入社員に求めることはありますか?

相手の言っていることは鵜呑みにしないこと、そして良い質問をすることですね。
「昨日何食べましたか?」とか「先月の業績はどうでしたか?」とかではなく、みんなのためになる質問をしてほしいんです。

例えば僕に対して「5~10年後のこの件に関してどういう考えをお持ちですか?」とか、あるいは同僚に対して、人事の育成に関して質問するとかね。筋の良い質問をするのにも訓練が必要だと思うので、数か月前から会議の中でお互いに質問し合う時間を設けています。

 

ーーー確かに筋の良い質問は、本気で会社やサービスの未来を考えていないと出てこないかもしれませんね。

だから採用でも「どういう質問が出るのか」は一番大事にしていますね。

質問の内容によって、その人が何を考えているか、会社の下調べをどれくらいしているのか、このビジネスを、この会社の将来をどう考えているのか、何に興味を持って、何に疑問を持って、僕からどういう答えを引き出したいのか… 実に色んなものが垣間見えますから。

これから応募してくださる方には、「最後に質問はありますか?」と聞いたときに「ありません」と答えるのではなく、聞かれてなくても「質問してもいいですか?」と手を挙げてくるぐらいの熱量を期待したいですね。

 

悩んで考えた末のステージクリア。何事もこの過程に心が踊る

 

ーーーここまで「新しい取り組み」や「現状を疑う」というキーワードが出てきましたが、それを乗り越えて進化できたときの喜びが、二之部様がさまざまな場でお話しされている「楽しく働く」という考え方に通じているのでしょうか?

そうですね、人によって何が楽しいかは異なると思いますが、ビジネスでも個人としても、「何か新しいものを作る」って楽しいじゃないですか。
思い描いているモノを作るために、まずは準備をして、形にするために一つひとつ積み重ねてっていう、その過程にすごくワクワクするんです。

 

僕、ビジネスってゲームやスポーツと一緒だと思っていて。
あの有名なロールプレイングゲームにも、いくつものステージがあって、途中で仲間を募ったり、武器を買ったり、敵と戦ったりしながらゴールを目指していきますよね。

途中でつまずくと原因を考えて、違うことを試して、コツを掴んで、そうしてやっとクリアする。だけどそれはゴールじゃなくて、また次の更に困難なステージが出てくる。
これはもう、ビジネスと全く一緒だなと。

ゲームやスポーツに限らず、将棋でもチェスでも碁でも、言うなれば勉強だって同じです。因数分解を解くのもクイズやパズルと一緒で、悩んで調べて最終的に解けた!という楽しさがあるじゃないですか。

 

ーーー課題をクリアしたい!という原動力は幼少期からお持ちだったんですね。

子供の頃は地理がすごい好きだったので世界地図をよく見ていたんですが、今みたいにインターネットがなかったから、世界中の行ったことのない国を想像したり、映画を見て思いを馳せたりしてましたね。
歴史なんかも、偉人のイラストを見ながら、この人はどんな人だったんだろう、何を食べてたんだろうって想像するだけで面白かったなぁ。
英語なんてまさにそうで、「違う世界の言葉分かったらいいな!洋画の世界行ってみたいな!」という興味や憧れが始まりでした。

 

要は、仕事に限らず何でも楽しいと思えるかどうかだと思うんです。
もちろん仕事は大変なこともたくさんあります。すごい悩むし、心も折れそうになるし。
だけど目の前のステージをクリアして次のステージに行けた!という経験をすると、やっぱり仕事って楽しいなと再認識するんですよね。

 

お金を稼ぐために仕事をしているという人もいっぱいいるだろうし、定時になったら帰ろうという人もいる。人それぞれ色んな仕事への向き合い方があると思いますが、人生を何十年として見たときに仕事にかけてる時間ってすごく多いじゃないですか。その時間が楽しくないのは、とてもつまらないだろうなと思うんです。

 

ーーー二之部様が仕事で悩むのはどんなときなんですか?

ビジネスって合理的な部分と非合理的な部分、言わば感情的な部分があるんですけど、そこがなかなか難しいですね。人の気持ちはゲームとは違うから、なかなか複雑で推し量れないなと。

今日も一通メールをもらってね、仕事に関係ないことだけど、どう返信しようか頭を抱えちゃいました。人との接し方となると、解決策が見つからずに悩むことが多いですね。

 

ーーー普段社員とコミュニケーションをとる際に気を付けていることはありますか?

あまり回りくどく言わないようにしています。注意するときは注意する、よかったときはよかったと言う、感謝のときは感謝を伝える。そうすると誤解されることは少ないのかなと。まだまだ注意されることも多いんですけどね(笑)

 

もう一つ大事にしているのは、人格の否定は絶対にしないこと。「あの人はダメ」とか「この人はいい」とか、人格に対するジャッジはしないようにしています。
「このプログラムずれてない?」とか「この図式は間違ってるよね」とか、成果物に対する指摘はしますが、それと人格とは別の話ですからね。

 

信頼できる仲間と共に、今立ち向かっている相手とは

 

ーーー今後の課題はたくさんあるかと思いますが、中でも早めに取り掛かりたいことはありますか?

今の課題は、ずっと会っていない社員がいること、コミュニケーションが不安定なことですね。コロナの影響で出勤率は15%くらいで、1ヶ月ぶりにオフィスに来たとか、画面上では会っているけど、直接はしばらく会っていない、という現状が大きな課題だと思います。
基本的にはテレワークや在宅勤務は全然良いと思うんですけど、ずっとというのはちょっと違うかなと。

 

最近は採用に力を入れていて、ここ3年で50人くらい採用しているんです。新しいメンバーは特にコミュニケーションを取らないといけないのに、テレワークでの就業という面もあるので、コミュニケーションが脆くなってるんですよね。

なるべくオンラインでも雑談なんかはするようにしているんですが、オンラインだと時間になったら「はい終わり」、みたいな場面もよくあって。お互い理解し合えている安心感や一体感は見えにくくなっているなと思います。

 

なかなかどうしようもない部分ではありますが、直接会って立ち話をするだけでも違うんだろうなと思いますね。微妙なニュアンスであったり、相手から感じられる空気感だったりね。なるべく早くコロナが終息するといいんだけど、なかなか見通せない中で、正直悩んでいますね。

 

ーーー悩んだ末に出てきた打開策はありましたか??

まだ社員には発表してないんだけど、特に新しく入社した人には、違う部署の先輩をマッチングさせて「メンタープログラム」をやろうかなと思っています。1対1でケアを行う。

あとはチームミーティングの際に雑談をする時間を作ろうとか、「緊急事態宣言が終わったらたまには出勤して直接話そうね」とか、小さなことかもしれませんが「この状況をみんなで工夫して乗り越えていこう」という話は伝えてますね。

 

ーーー最後になりますが、実現できるかどうかは一旦置いておいて、仕事をしていて二之部様の胸が一番高鳴るのはどんなときですか?

ワクワクするのはやっぱり、半年後1年後はもちろん、3年後くらいにはこうなっていたいという将来の姿を思い描いて、こうしていこうよ!と社員のみんなに共有するときですね。

 

例えば、ポイントプログラムもそうだし、新しいデザインのカードを売っていこうとか、加盟店事業を始めようとかですね。ただ、新しいことを始めるようとするときって、当たり前なんだけど最初はみんなの思い描く姿もズレているんですよね。

だけど試行錯誤を重ねてゴールの糸口が見えてくると「お、みんなも同じことを思ってるな」という感じが出てくるんです。ぼやけて見えていたものが綺麗に見えてくるというか。

 

僕も最初から正解を持っているわけではないので、みんなで意見を出し合ったり、図にしてみたりってやっていると、全く見えていなかったステージ1の段階から、ステージ30がうっすら見えてくる。そうやって悩んで耐えて考える過程を経て、みんなで「見えてきたね!」と喜び合える瞬間が一番嬉しいですね。

 

ーーー二之部様が「ゲームと一緒」とおっしゃったビジネスは、決して一人でプレイできるようなものではなく、チームで協力して動いてこそ面白みが出てくるものなんですね!

そうですね、一人でやっていることはひとつもないです!

 

ーーー聞いているだけでワクワクする、貴重なお話をありがとうございました!

 

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