香川の宝を全国に。日本屈指の和三盆メーカーばいこう堂(株)代表インタビュー
written by 斉藤彩
「見て感動、食べておいしい」をコンセプトに、香川県産のさとうきびをつかった和三盆糖の製造、販売をしている老舗企業、ばいこう堂株式会社様(以下敬称略)。
本日は大阪府大阪市にある本社にお邪魔し、3代目代表の黒川 昌彦(くろかわ まさひこ)さんに、和三盆に込める想いやばいこう堂で働く実態についてお話を伺いました!
インタビュイー:黒川 昌彦(くろかわ まさひこ)さん
ばいこう堂株式会社の3代目代表取締役社長。大阪府堺市出身。
営業職の基礎を学ぶために、新卒でコピー機メーカーに営業職で就職。
(1社目でコピー機の営業を選んだ理由は、当時一番キツそうだったから。)
24歳でばいこう堂に入社し、35歳で専務取締役、45歳で代表取締役になり、現在に至る。
インタビュアー:清水 遼太
「働くかっこいい大人を増やす」をビジョンに掲げるインビジョンの営業担当。
他社を見て知る自社の魅力。ばいこう堂が和三盆でつくるもの
ーーばいこう堂さんに入社する前に他社さんで働かれていたということですが、他社を見る前と後とで、ばいこう堂さんの印象は変わりましたか?
正直実家がここまで大きな規模で商売をしているイメージはありませんでしたね。
ばいこう堂でも1社目と同じく営業職から始めたんですが、入って3年くらいで「製造も経験しておかないと」ってことで、1年香川に行ってた時期がありまして。修行みたいなもんですね。
当初大阪の部隊には親戚と知人の5人程しかいなかったのであまり実感してなかったんですが、いざ工場に行くと、50人くらい製造に関わる人がいて。それを見て「頑張らなあかんな」って思いましたね。
それでもこんな規模の会社になるとは思ってもみなかったですけどね(笑)
ーーばいこう堂さんの知名度が上がり、会社の規模が大きくなってきた背景にはどんなことがありましたか?
しいて言うなら、「和三盆の狭い世界を広げたい」という想いでやってきたからですかね。和菓子に使うお砂糖、というだけじゃなくて、季節や流行りに合わせて文字通り”形”を変えて、広報の手段も増やして、積極的に展示会に出て。
慶弔用、婚礼用のお菓子、というイメージしかなかったのが、昔に比べると気軽に購入いただけるようになってきたのかなぁと思いますね。それでもまだまだですけどね。
ーー継がれた際に先代からされたお話で記憶に残っていることはありますか?
「会社っていうのは、何らかの形で社会に貢献せんことには生き残られへんよ」というようなことを言われましたね。「ばいこう堂さんの商品がなかったらうちは成り立たないよ、とお客様に言われるような存在になりなさい」と。
ーー社是にある「係わる人々の幸せを願う」という言葉にも通じますね。
和三盆づくりを通して社員も幸せに、提供するお客様にはより良い未来を。社是にはそんな思いを込めてますね。
うちの売上の7割はお干菓子(ひがし)なんですよ。だからお客様にはうちのお干菓子を見て癒されてほしい、食べて「おいしいな」とほっとした気持ちになってほしい。そんな風にお客様の人生に色を添えられたらと思っています。
ずっと大事にしたいのは、従業員との”心の距離”
ーー和三盆づくりを通して社員も幸せに、ということでしたが、社員の幸せのために意識されていることはありますか?
年2回は必ず全従業員と面談してますね。香川の工場も、大阪の本社も、東京の営業所も、直接顔を合わせたいので全部会いに行ってます。
あとは、できん約束はしない!これが一番ですね。会社は「人」がつくりますから。人と人とのつながり、信頼関係が一番大事じゃないですか。
約束できないことは口にしないし、口にしたならちゃんとやる。だからこれまでお客様にも従業員にも嘘をついたことはないですよ!
ーー信頼関係が構築できているのは間違いなくばいこう堂さんの強みの一つだと思うんですが、他にもここがうちの強み!と言えるところはありますか?
今までは欠員が出ると即戦力になってくれる中途の方を探してたんですが、やっと新人を長い目で育てていけるチームになってきたかなと思います。
メンバーが自分たちで考えて、「こうした方がいいと思うんですけど」という意見が出て、それをみんなで検討して、っていう参加型の雰囲気になってきたのはいい傾向だなと。生産効率も昔に比べたら2倍くらいになってるんですよ。
責任は社長が取ったらいい話なんで、社長がおらんくても回るような会社になったらいいな。失敗してもいいから挑戦できる、そういう組織作りをしたいですよね。
ーー新人さんが成長を実感できるような制度もあるんでしょうか?
7年前くらいに査定制度を設けたんですよ。グループ目標と個人目標を設定して、給与の昇給に反映させるというやり方です。それまではポストがあってもほとんど機能していなかったのが、制度を設けてからは3〜5年で主任クラスになっている子も出てきてますよ。
ーーみなさん例えばどんな目標を立てられているんですか?
例えば型打ちっていう製造工程だと、不良品が出たりもするんですよね。だから「不良品を5%減らしましょう」みたいなね。メンバー間で難易度の差が出たらいけないから、上長と相談しながら具体的な数字で目標を決めてもらっています。
海外進出はまだ早い!?今のばいこう堂が目指すもの
ーー各チーム、各メンバーで目標を決めているということですが、会社の目標はどのようなものにしているんですか?
毎年変わらず『売上5%アップ』を目標にしています。
この2年ほどはコロナの影響で売上も落ちていたんですが、今期どうにかコロナ前の売上に戻そう!とみんなで一丸となって、達成できました。
ーーコロナ渦を経て変わったことはありますか?
販売方法の割合は変わってきてますね。一番変わったのは、インターネットでの売上。デジタルコンテンツは効果の検証もできますんで、「どういう打ち出しにするか」とか「どういう年齢層に向けて発信するか」みたいなのは、若い人に任せてやってもらってるけど、僕も勉強していかないとあかんね(笑)
ーーこの先のばいこう堂をどんな会社にしていきたいですか?
やっぱりね、うちは和三盆がメイン。それはこの先も変わりません。だけどね、香川県では特産品ってこともあって名も通っているけども、日本全国で見たら和三盆の存在を知らない方もいるでしょ。
全国各地の百貨店さんなんかでPR活動をやらせてもらってるんですけどね、和三盆を見て「これ何?」って言われるお客様がほとんどなんです。
「もうそろそろ世界に出なあかん」なんて言っていただけることもあるけど、まだまだ国内でも知らない人がいる。だからまずは「国内に和三盆を知らない人はいない」っていう状態にしたいですね。
日本だけでも1億人以上の人口がおるからね。もっと若い人に食べてもらって、和三盆づくりに関わりたいと思ってくれる人が増えたらいいなと思います。
ーー最後に、今いる社員さんやこれから仲間になる方に向けて一言お願いします!
採用っていうのはね、縁や思うてるんです。応募してもらわなかったら、会いに来てもらわなかったら、私と皆さんとは関わることもできないわけで。
たくさんの会社が募集を出してる中で、縁あってうちに来ていただいているからね。働く以上は「ばいこう堂に来てよかったな」って思ってもらえるようにしたいですよね。
可能な限り意見は聞いて、それにちょっとずつでも対応できるように我々も頑張ります。できることはできる、できひんことはできひんって言いますけどね。嘘は言われへんので(笑)
取材後記
口に入れたらほろっと溶けて、心までほぐしてくれるばいこう堂の和三盆。そんな和三盆のように温かい雰囲気で迎えてくださった黒川代表はじめ本社スタッフの皆さんから、陽だまりのようなエネルギーを感じました。
「一人でも多くの方にとって宝物のような記憶になってほしい」という願いを込め、ばいこう堂では和三盆を『和三宝』と名付けている、というエピソードの通り、宝物のように会社を守り続ける黒川代表。「まだまだここから」と話す代表の謙虚さが、長く愛される会社でいる秘訣なのでしょう。
まだ食べたことがないという方は、ぜひ見るだけでも楽しい和三盆の世界を覗いてみてくださいね!
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